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- 基礎研究を推し進める東京理科大学の優れた研究所を訪ねて 研究推進機構 生命医科学研究所 【第1回(ミッション編)】
基礎研究を推し進める東京理科大学の優れた研究所を訪ねて 研究推進機構 生命医科学研究所 【第1回(ミッション編)】
- 2021/9/3
- 大学, 理窓 2021年9月号
東京理科大学には、国際的に高い評価を受けている研究機関が数多くあり、大学が誇る研究所をシリーズで紹介している。生命医科学研究所をこの回から数回にわたり掲載する。今回はミッション編として生命医科学研究所を訪問し研究科長の北村大介教授にお話を伺った。
東京理科大学生命科学研究所は1989年、生命科学を基礎とした産学協同研究拠点として設立され、本学の生命科学研究開発拠点の役割を果たしてきた。1995年には、日本免疫学の中興の祖である多田富雄博士を所長として迎え、免疫学を中心とした研究所に大きく変貌し、国際研究拠点としての体制を整え活動を続けてきた。この間、学問の急速な進歩により、分子レベルでのメカニズムの解明が、新しい疾患概念、診断法、治療法に結びつく時代となり、時代の要請にも合わせて、2012年には臨床開発部門を設置し、生命医科学研究所と改名し医療への挑戦を明確な目標として打ち立てた。また、1997年4月には、研究所附置の大学院、生命科学研究科も開設された。本研究科は、基盤となる学部を持たず、物理、化学、工学といった、生物、生命系以外の学部・学科の卒業生も受け入れ、広い視野に立った特徴ある生命科学の研究・教育を実施しており、その卒業生は、世界各地で、研究者や技術者として活躍している。
2009年に採択されたがん医療基盤科学技術研究事業で薬学部、理工学部、基礎工学部、工学部と強く連携し、学内医理工連携研究の中心的な役割を果たしてきた。また、全学的な共同研究を一層進めるためヒト疾患モデル研究センターの設立と運営を行ってきた。これらの活動を通じ、生命医科学研究所は、学内の生命科学・医学の基礎的研究から応用研究まで幅広い研究のハブ的役割も担ってきた。
さらに、学外の医療機関、大学、研究所との共同研究体制、実用化促進のため産業界との連携を強化してきた。2017年度には、医療技術・機器開発部門(2020年4月より医療機器材料開発部門と改称)を新設し、学内の併任教員の発令、学外からの医療系客員教員の招聘を進めてきた。さらに2018年4月から国立がん研究センターとのクロスアポイントメント制を活用した医療機器開発拠点を国立がん研究センター東病院先端医療開発センター内に設置し共同運営を開始した。さらなる共同研究や他機関との連携の深化のために、2020年4月より共同研究部門を融合研究推進部門と改称し、活動をさらに活発化している。
免疫学中心の研究活動に加えて、学内の多くの研究者との連携の下に、発生学、神経科学、炎症の基礎的研究から、がんや難病など幅広い医学研究、臨床応用を目指すトランスレーショナルリサーチを推進している。加えて、産業界等からの大型外部資金の導入による研究力の飛躍的向上を目指し、2018年4月から新たに炎症・免疫難病制御部門を設置し、この分野で大きな業績を上げさらに実用化のための臨床研究を推進しているグループを招聘した。このように、近年の生命医科学研究所は目覚ましい変化と発展を遂げている。
生命医科学研究所ではこれらの体勢のもと、自ら幅広い生命・医療に関する基礎的・応用的研究を学内共同研究により推進するとともに、学内の叡智と研究成果を医療に社会実装するハブの役割を果たすため、広い範囲の多様な優れた基礎生物学・医学研究者の陣容を擁する研究所を構築し、生命に対する畏敬の念と病に苦しむ人への慈しみの心を持って研究を進めて行きたいと考えている。また、研究科においては、研究所の方針をよく理解した研究者や技術者を輩出していきたい。
◆取材記
医療機関、大学、研究所との共同研究体制や実用化促進のため産業界との連携を強化するなど、学内でも横断的に進められていると認識し、研究所を後にした。