違いを楽しみ、違いを活かす

受賞歴 2021年度 外務大臣表彰(日本と香港との相互理解の促進)

研究室紹介
私は理科大に着任して、まだ1年余りの「新人」です。子供の頃から、理科も数学もまるでダメな、文学部のベテラン教師でした。ですから理科大へ転職を決めたとき、周囲は呆気に取られていました。でも一番驚いていたのは、私自身です。

それまでの35年間は、海外にいました。アメリカの首都ワシントンに10年、香港に25年暮らし、香港大学文学部の日本研究学科で、食文化のクラスや、産学連携の教育プログラムを担当していました。

そんなある日、理科大に、2021年に国際デザイン経営学科(IDM)が新設されると伺います。そして、その「あたりまえ」に挑む姿勢にひかれました。

IDMがめざしているのは、分野や文化を超えて才能をつなぐ、プロデューサーを育てることです。世界は、やっかいな問題に溢れていて、これまで「あたりまえ」だったアプローチでは解決できないことが多々あります。そんな時、分野や文化の違う人たちが力を合わせると、突破口が開けることがあるのです。

それには、心ある人たちに“コンフォート・ゾーン”といわれる、居心地のいい場所から出てきてもらい、それぞれの視点から、本音で意見を交わす場が不可欠です。今求められているのは、まさにこうした場を作り出せる人で、「異彩を束ねる、異才を育てる」というのが、学科のビジョンです。

IDMの学生たちは、「国際」「デザイン」「デジタル」「経営」の4つのゼミを、それぞれ1学期ずつ回ります。つまり卒業生は、スペシャリストというより、ジェネラリストになります。しかし、4つ分野を回るからこそ、身につく「力」もあります。問題の俯瞰力や、異文化への対応力です。

異文化への対応力は、長年に亘り、日本企業のグローバル展開を支えてきた力です。今から60年以上前、日本発の家電である炊飯器が、海外市場に出ました。香港では炊飯中にフタを開ける、イランでは釜に油をひいてお米を焦がすといったニーズを聞いて、日本人エンジニアは目を丸くしながら、炊飯器の形と機能を変えていきました。ローカル化です。現地の人と組んで、自分の「あたりまえ」と向き合うことは、グローバル化への一歩です。

また、エアラインでも、異文化への対応力はサービスの要です。今年、共編者として関わった本『憧れの感情史――アジアの近代と<新しい女性>』では、今から70年前、戦後初となる日本の国際線就航時に行われた、ブランディングについて、章を書きました。日本の顔となった、客室乗務員の女性たちに求められたのは、文化を行き来する対応力でした。

理科大は、女性教員の割合が14%ですが、IDMは38%。学生も女性比43%と、そんな意味でも新しい学科です。一期生が巣立つのは2025年になりますが、違いを楽しみ、違いを活かす、そんな場をデザインしてくれるよう、大いに期待しています。

 

卒業生コメント
伊藤 耀 国際デザイン経営学科3年生
中野先生の授業では、日本や世界の文化等の論文や映像を交えた、端的で分かりやすい説明によって、グローバルな視点を養うことができます。先生の海外でのキャリアやエピソードが随所に盛り込まれており、受講していてとても興味が掻き立てられます。時折、通常ではお会いすることが困難なスペシャルゲストの方を交えたセッションが行われることも、授業の醍醐味の1つです。

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