壊れない堤防があればいいんだ~二瓶研究室~

地震、津波、洪水など、災害リスクが極めて高い場所に位置する日本。そのメカニズムの解明や対策技術の確立が急がれています。
二瓶研究室は、「水」に関わる防災、環境問題を解決し、安全安心で環境に優しい社会をつくるために必要な技術開発や街づくりに取り組んでいます。

このままじゃ、洪水はなくならない。

水に係る防災や環境の研究を専門としていますが、特に水災害の調査やその対策技術開発に注力しています。近年、地球温暖化などの影響で想定を超えるような豪雨や洪水が起きています。2015年、茨城県・常総市の3分の1が浸水した鬼怒川の決壊では、現地調査を行い、洪水が広がっていく様子をシミュレーション解析して、そのメカニズムを明らかにしました。
また、新しい河川堤防の技術開発にも取り組んでおり、土の堤防(土堤)にジオシンセティクスというメッシュ状の繊維材料や砕石を埋め込んだ強い堤防を提案しています。この新しい堤防技術はオリジナリティが高く、世界最先端であると自負しています。
日本の一般的な河川堤防は、その地で入手した土砂を用いて作る「土堤主義」ですが、河川が越水した場合、土堤そのものが削られ決壊してしまいます。粘り強く、壊れにくい堤防技術が実用化できれば背後の市街地における洪水被害を最小限に食い止めることができると考えています。

土だけの堤防は、やっぱり弱かった。

堤防の決壊要因としては、一般に、越水・浸透・洗堀(浸食)と言われていますが、鬼怒川での堤防決壊の主要因は越水です。世界的に見ても土堤は越水に弱いのですが、実際の越水時に堤防がどのように決壊するのか不明な点もありました。
私たちの水理研究室には長さ20m、高さ2mにも及ぶ実物大スケール水路があり、実際の状況に近い環境で実験することが可能です。実験の結果、越水の後、堤防の頂点から流れ落ちる水が堤防の土自体を大きく削る様子がわかりました。
同様に、私たちが作った新しい河川堤防の実験も行っています。土だけでは2分半ほどで崩れたものが、上部のみアスファルトで舗装すると約25分持ち、さらにジオシンセティクスを埋め込んだものでは、実験中は壊れないという想定した通りの結果がでました。このように、さまざまな状況を大型の実験で確認したり、理論を実証していくことは、重要なことだと考えています。

日本や世界を守る研究を、野田から

自然に囲まれて、広大な土地を有する野田キャンパスの最大の魅力は、大きな実験施設を製作できることです。私たちの水理研究室でも実物大スケール水路を導入し、他の大学にはできない大規模な実験を行っています。
また、自然災害は「土木」に限定されたものではなく、10の学科がそろう理工学部では、建築学科とともに水害に強い家や街づくりを研究するなど可能性は無限に広がります。環境学、生物学、化学、社会学、放射線学など、さまざまな学際分野と融合して研究を進めることもできると思っています。
大学は世の中の課題を見つけて、それを解決する方法論や実例を学ぶことができるところです。そして、自分の将来に対してどのようなプランを立てたいかを自然と身に付けることができます。皆さんもぜひ理工学部や当研究室で学び、技術開発を通じて社会貢献し、自らの進路を切り開いていってください 。


[卒業生コメント]
 中山 朝陽(理工・土木2014) 小田急電鉄株式会社

水理研究室では様々な場所での観測や実験等、決して一人ではできない作業を研究室のメンバーの協力を得て行うことが印象的でした。現在は派遣先で幹線道路を整備する行政手続に向けた協議・調整を行っておりますが、多くの関係者がいる中での仕事の進め方は研究を通じて培ってきたものが活かされていると実感しております。

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