エネルギーとニューマテリアルのための 実験系マテリアルズインフォマティクス(MI)の構築を目指して

【研究室紹介】
リチウム電池正極材、熱電変換材料、ガスセンサなどの「エネルギー関連材料」、光触媒や排ガス浄化触媒といった「環境浄化材料」の探索に取り組んでいます。単に材料を探すだけでなく、機能の最適化に向けた合成法の開発、一方で材料本来の性質を見極めるための単結晶育成にも挑戦しています。何でも屋のように見えますが、共通していることは、扱う材料は結晶、すなわち、何かしら周期的な原子の配列があるということ。結晶学の考え方、各機能材の合成法や物性をメンバー内で情報共有することで、それを各自の現在の研究、将来の研究に生かしてほしいと考えています。


藤本研究室メンバー(2018年度時)

研究例
①リチウム二次電池正極材

図1.CR2032型電池の作製イメージ

本学ではナトリウムおよびマンガン二次電池の研究に取り組まれている先生もおりますが、藤本研究室では層状岩塩型、スピネル型、オリビン型などに含まれる遷移金属元素を多元素置換した新規代替材料の探索を行っています。材料合成から図1に示す環境下(イメージ)でCR2032型のボタン電池を作製し、充放電サイクル試験をしています。

②酸化物熱電変換材料

図2. 熱電変換素子のイメージ図(pとnは半導体のタイプを示す)

熱電変換材は合金系がペルチェ素子として冷温庫などに入っていますが、耐酸化性、耐熱性に優れた素子にするのであれば酸化物系にする必要があります。p型半導体およびn型半導体のそれぞれについて候補となる材料が挙がっていますが、その性能をさらに向上させるために前述と同じように多元素置換体を作製し、その熱電特性を調査しています。

③NOx浄化触媒

三元触媒、インテリジェント触媒、スーパーインテリジェント触媒に続く触媒が研究され、車一台あたり、これらには白金が4g程度含まれていると言われています。我々は貴金属無担持での高活性NOx浄化触媒の創製・高機能化を目指し、当研究室で着目している材料についてガス吸着メカニズム・触媒能を、分光学的手法などにより評価しています。

実験系マテリアルズインフォマティクス(MI)の構築に向けて

MIは米国のMaterials Genome Initiativeを発端に世界中に広がった材料開発の新たな流れであり、材料科学とデータ科学の融合によって材料開発から実用化に要する時間・コストを大幅に削減しようという試みですが、データ駆動型、すなわち帰納的に材料予測するケースが多く、化学計算、データベースや論文より抽出したデータから機械学習により高機能新素材を予測するのが大半を占めています。非常に効果的な方法ですが、実験(現場)を主戦場とする方々からすると、論文などのデータベースは実験条件に統一感がないこと、また、導き出された材料が本当に合成できるのか? という不安を残します。
藤本研究室では、ハイスループット技術を活用した実験環境下での材料探索を進め、前述の電池材や熱電材の代替材料の探索などを進めています。最近では、結晶学データを効率的に収集すべく、放射光施設でX線回折やX線吸収微細構造データを効率的に取得する治具を開発し、さらにはリートベルト解析の自動化により、各試料の構造精密化(結晶学データの収集)のスピードアップが可能になりました。今後はこのデータ群をデータ科学としてどう生かすか挑戦します。

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