既成概念を覆す革新的なDDSの開発を通じてうつ病、認知症やCOPD治療に貢献する

受賞
2001年 藤井賞(大塚製薬)
2011年 創剤開発技術賞(日本薬剤学会)
2013年 製剤の達人(日本薬剤学会)

研究室紹介
山下研究室では、教授の山下と講師の秋田の2人体制で、優秀な学生と共に、常に臨床的な意義と研究の本質を意識し、既成概念にとらわれず、多角的な視点から研究を推進しています。さらに研究テーマを共有し深堀するために、研究チームを構成し、先輩が後輩を指導し、同じ目標に向かってチーム一丸となって研究を進めています。また、週レポ(計画・評価)を通じて、計画性と自主性を身に付け、ゼミやミーティングで研究の全体像を理解することによって、学生には自分自身の研究の位置づけを明確にし、納得して研究を行うように指導しています。

主な研究テーマ
1)認知症やうつ病治療を目指した新しい概念に基づいた神 経ペプチドの中枢デリバリー技術の開発
2)肺胞再生を基盤とした慢性閉塞性肺疾患(COPD)の根治 治療薬のDDS*と経肺システムの開発
*DDS:ドラッグデリバリーシステム

研究内容
1)革新的なNose-to-Brainシステムの開発:
治療満足度の低いうつ病やアルツハイマー病に新しい作用機序で有効な神経ペプチドを経鼻投与により、効率よく中枢へ送達させるDDSの開発を行っています。DDSと神経科学の常識を覆し、神経ペプチドが神経細胞を乗り継いで作用部位へ移行することを世界で初めて証明しました(図1)。このNose-to-Brainシステムは難治性で治療薬のない神経変性疾患に対して新しい治療法を切り拓くものと期待されます。

2)肺胞再生を基盤としたCOPD根治治療薬の DDSと経肺システムの開発:
COPDは世界の死亡原因の第3位にも関わらず、治療方法として対症療法しかないのが現状です。そこで、山下研では、COPDに対する根治治療薬の開発を目指して、肺胞再生というアプローチで、いくつかの候補薬物を見出しました。その薬物を最大限に活かすために、生体内の仕組みを利用して細胞内動態を制御し、効率よく核内へ送達できるDDSを開発しました。さらに実験計画法を活用し、臨床応用できる吸入粉末剤の製剤設計を行うと共に、理想的な服薬のタイミングを見出す時間治療の検討も行っています。

研究者の育成と研究職への輩出
山下研では、製薬企業の研究開発部長の経験を活かして製薬企業で活躍できる研究者の育成に特に注力しています。具体的には実験のプロトコール検討会での徹底した議論から論理的思考力と説得能力を磨き、また、学会での優秀発表賞を受賞するためのスライド作成やプレゼン能力向上のための指導を行っています。その成果として、数多くの卒業生が製薬企業の研究職として活躍しています。

2022年度研究室メンバー

 

卒業生コメント
木村 玲良 中外製薬株式会社 製剤研究部(薬学研究科 薬科学専攻 2020年3月修了)
近年、難溶性など物性が厳しい薬の卵が多く、成功の鍵は製剤研究にあると言っても過言ではありません。一方、薬の開発には薬理や動態等多面的な判断が必要です。山下研は多様な製剤を、動物実験なども行って包括的に評価する数少ないラボです。ここで得た学びは製剤研究者として他部署と連携し薬を創る上で役立っており、山下研を選んで良かったと確信しています。

 

関連記事

ページ上部へ戻る