行動の積み重ねが大志を育む

私は、社名と同じサービス名でプレスリリースサイトを2007年に開始し、これまで(2023年8月末時点で)累計8万7千社、国内上場企業のうち55.6%に発信利用いただいています。最近ではありがたいことに母校である理科大はじめ大学や行政機関にも利用いただき始めています。

大学時代
大学の専攻学科に「経営」という文字が入っているものの、大学を卒業する時には自分がその後上場企業の経営者になるとは思いもしませんでした。しかし今振り返ると、理科大の理工学部に入学して辺境の地で過ごした日々も、後に自主廃業する山一證券に入社したことも、すべては現在につながる重要な経験であり、何か一つが欠けても今の自分もPR TIMESもなかったと感じています。とはいえ、大学時代の私は優れた成績を収めていたわけではなく、落ちこぼれない程度のありふれた理科大生でした。大学の授業より塾講師のアルバイトに熱中し、夏期講習期間は朝から夜までぶっ通しで連日勤務。それでも留年せずに4年で卒業できたのは友人に恵まれたおかげでした。試験の度にみんなで友人宅に集まって一夜漬けで勉強したり、大学の近くにあったフライパン(現在閉店)や新華楼などで友人たちと食事しながら他愛もない会話をしたりした何気ない日常が一番の思い出です。それでもインターネット超黎明期、公開されたばかりのWebブラウザ「Mosaic」に大学の授業で触れることができたのは、先端技術が社会実装されていく予感を抱く貴重な経験になりました。

社会へ
新卒で入った山一證券での配属先は福井支店でした。金融工学を多少学んだにもかかわらず、キャリアのスタートは地方の営業店。日経平均が週に4日下がる厳しい環境下で、株式投資を託していただく仕事。住宅地図を片手にエリア内全ての建物を訪問し、たとえ断られても、翌週もそのまた翌週も、同じ様に訪問するドブ板営業を経験しました。何度も足を運んでお客様になっていただいても、お客様の資産を減らしてしまう結果にばかりなっていました。そんな時の光明となったのが米NASDAQ市場でした。「Mosaic」の開発メンバーらが創業したNetscape Communicationsなどネット企業がNASDAQに上場して株式市場をけん引し、インターネットが革命のように社会を変えていく機運の高まりを感じていました。この頃に自分もいつかインターネットを活かした事業を立ち上げたいと思ったのを覚えています。しかし「いつか」と先送り思考だったあたり、当時の自分はまだ事業家の芽は眠ったままでした。

PR TIMES立ち上げ
PR TIMESを立ち上げたのは、当時私が取締役CFOを務めていた今の親会社が業績不振になったことがキッカケでした。業績が計画から大幅に下振れてしまい、目標にしていたIPO(新規株式上場)を短期的には断念することになります。取締役とはいっても管理部門管掌の新参者。当時の事業に関与しても良い結果につながらないのは明白です。そこで、CFO業務を続けながら既存事業とシナジーが活かせそうなネットサービスを立ち上げることにしました。それがPR TIMESです。
山一證券時代にぼんやり思い描いたものを実現するのに、既に10年の月日が経っていました。しかも、すぐにうまくいくほど甘くありません。サービス開始後しばらくは低空飛行が続きました。浮上の兆しをつかんだのは2010年頃。スマートフォンの普及が大きなきっかけです。パソコンだけでなくスマートフォンでもインターネットを利用できるようになったことで、誰もがいつでもどこでもその場で情報を検索できるようになりました。さらにSNSを通じて情報が広がりやすくもなりました。そもそもプレスリリースは生活者に大切な情報を届けるために生まれたものです。1906年、アメリカでペンシルバニア鉄道の脱線事故が発生した際に事故の詳細を公表し、The New York Timesに原本がそのまま掲載されたことがプレスリリースの始まりといわれています。プレスリリースはメディア向けの報道資料であるものの、PR TIMESを立ち上げたときから「生活者に役立つ情報を届けたい」というコンセプトはずっとありました。

使命感、そして大志へ
私たちが進むべき道が見え始めたのが、2011年、東日本大震災が発生したときでした。震災の影響で新商品の発売やプロモーション活動は次々と中止になり、プレスリリースの量は激減。私たちもプレスリリースの自粛を推奨しました。一方で、被災状況や募金活動、支援活動のことなど、生活者にとって必要な情報、届けるべき情報はたくさんありました。そこで、震災に関わる情報であれば無償でPR TIMESを利用いただけるようにしました。
この時の経験から、社会に価値がある情報を流通させるという使命感を育み始めることができ、「行動者発の情報が、人の心を揺さぶる時代へ」というミッションを思い描けるようになりました。何か始める前に大志を抱けるのは素晴らしいと思います。私には経験がないのでうらやましい。しかし、私のように行動を積み重ねる中で生じる摩擦が熱を帯びて、志を温めていき、やがて大志と呼べるぐらいまで膨らんでいくのでも良いと思っています。

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