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薬剤師と物書きの二足の草鞋
- 2021/9/3
- 卒業生, 理窓 2021年9月号
履歴
2004年ジャーナリスト専門学校文芸創作科卒業。
病院勤務の傍らライターを続ける。
2013年より焼津市立総合病院勤務。
2018年から漫画『アンサングシンデレラ』医療原案担当。
小児薬物療法認定薬剤師、スポーツファーマシスト。
物書きになりたい
私は高校の進路指導でも、理科大に通っていたころにも、文章書きになりたいと言っていた。傍から見たら薬学部に入ってまでそんなことを言って、頭がおかしいんじゃないのと思われただろうが、そもそも文章書きに必要なものは経験だと思い、理系に進もうが問題ないと思っていた。大学で教職課程を取ったのも、文章を書く上で役に立つかもしれないと思っていた。大学卒業後、日々の業務に忙殺されてはいたが、高校の同級生で編集者になった人から「理系で文章を書ける人は貴重」という意見をもらってここまで続けることができた。
ぎりぎりの成績で卒業に成功してから20年
卒業して、ドラッグストアや街薬局勤務を経て現在病院薬剤師をしているが、一方で文章や物語を書くのが好きで、日経DIをはじめ記事を書かせて頂いて来た。それがコミックゼノン編集者の目に止まって、日本初(おそらく)の病院薬剤師漫画『アンサングシンデレラ』の医療原案をやることになった。おかげさまで評判もよく、現時点(2021.5)で第6巻まで単行本が発売されている。
ご存じの方も多いだろうが、2020年にフジテレビにより映像化された。ちなみに、本来は4月から放映されるはずだったが、COVID-19の影響で7月にずれ込んでしまった。漫画とは設定やストーリーが違ったりもしたが、概ね好評で薬剤師の存在意義を日本に周知することが出来たのではないだろうか。
さて、よく聞く「監修」でも「原作」でもなく「医療原案」という役名だが、主にストーリーの薬ネタ部分を考えている。ネーム(漫画の設計図)が出来上がってからチェックするのでもなく、ストーリー全部を考えているわけでもない。その中間、というところだ。
たとえば担当編集から、「次は産科で」などざっくりとした方向性を示され、合いそうなネタをいくつか返すと、編集者と作者の荒井ママレ氏が相談しつつプロットを作ってくる。そこに合うような薬剤師の動きや思考を説明し、必要なら症例を見つけて荒井さんがストーリーを考えてネームを作る。それに対してセリフや動きの細かいチェックをし、最終的に原稿チェックをして、やっと本誌掲載となる。基本は担当編集者を通して荒井さんとやり取りをしている、何度もやり取りし難産した回もあるが、最後にはさすがプロだなと思うストーリーが毎回出来上がってきて、自分の未熟さを思い知らされる。
薬剤師兼理系ライターとして
近年では、ワクチンや遺伝子組み換え食品などをはじめ、いたずらに不安を煽るだけでなく、科学的な考察・伝達ができる理系のライターが必要だと実感している。理科大にも、マスコミ関係に進む人材育成コースができてもよいのではないだろうか。医療ドラマや小説・漫画などの創作物では、そこにいるはずの薬剤師が活躍するどころか、たった1コマでも出てくることが珍しい。この漫画の話を受けた時、私には薬剤師を知ってもらいたい、できれば中高生に職業選択のひとつとして思い浮かべて欲しいとの期待があったので、TVドラマ化ははまさに最強だった。
ドラマは終わったが
原作はまだまだ続く予定で、日々の業務の合間にネタを考えたり、裏付けをとったりして過ごしている。ドラマは登場人物設定も内容も違ってオリジナルストーリーも多かったので、ぜひ原作も手に取っていただきたい。二度楽しめるのではないかと期待している。薬剤師の地位向上のためにも、宜しくお願いします。