真の海洋国家・日本をつくる内閣府副大臣・衆議院議員 黄川田仁志

1.東京理科大学で海と出会う
東京理科大学での4年間は、私の人生において、貴重な出会いの時間であったと思います。理科大学1年生の時に、スキューバダイビングのサークルに入会しました。日本と世界の海を潜り、海の世界に魅せられました。そして、人類にとって大切な海をもっと知りたいという好奇心から、3年次に海洋の研究ができる水理研究室に入りました。卒業論文では、大阪湾の潮汐残差流を研究テーマにしました。サークル活動や勉学などの学生生活の大半は「海」で占められました。理科大学での「海」との出会いが、私のその後の人生の方向性を決定付けることになりました。

2.東京理科大学を飛び出し海外へ
水理研究室では、海流や渦などの海洋における物理現象の解明が焦点でした。しかし、研究を進める中で、海洋物理から海洋環境へ興味の対象が移っていきました。1994年卒業当時は、海洋環境学を学際的に勉強できる学科をもった大学は、日本にはありませんでした。そこで、海外に学びの場を求め、メリーランド大学大学院(Marine Estuarine Environmental Science Program)に留学しました。メリーランド大学は、北米最大規模のチェサピーク湾について、多角的かつ総合的な研究を進めていました。その留学の縁から、国連環境計画/北西太平洋地域海計画(UNEP/NOWPAP)の研究員として働くことができました。NOWPAPは、日本、中国、韓国、ロシアの4カ国が共同して、日本海の環境保全のために働くために、世界に17カ所ある地域海計画の一つとして定められました。しかし、NOWPAPでは、日本が政策立案やリーダーシップで十分な役割を果たしているように見えませんでした。その当時、日本は海洋基本法も未整備で、各省庁は海洋問題に対してとても消極的な姿勢をとっていました。このような問題を解決するためには政治の力で正していくしかないと私は思うようになりました。

3.政治家として、真の海洋国家・日本をつくる
「真の海洋国家・日本をつくる」という志を立て、松下政経塾を経て、衆議院議員(埼玉県第3選挙区、草加市、越谷市)になりました。真の海洋国家とは、「国家の意志と戦略をもって、海を護り、海を開発・利用し、国民を豊かにする国家」と定義します。そして今、ほぼ全ての海洋政策に係わっています。その中でも特に力を入れているのは、深海のレアアース開発とCCS(二酸化炭素回収貯留)に係る政策です。

3-1.深海のレアアース開発
日本は海洋に目を転じると、資源がある国になれる可能性があります。注目すべきは、南鳥島沖の海底6,000m下にあるレアアースです。レアアースは、LEDライトや電動車のモーターに必要で、現在の環境技術になくてはならない物質です。陸地から採れるレアアース鉱石と違い、日本の海底のレアアースは放射能を含んでいないので、採算的に競争できる可能性があります。また、レアアース鉱石の放射能除去作業は中国でしか行われていません。従って、中国を必ず通過しなければならないサプライチェーンになっており、経済安全保障の観点からも問題があります。放射能フリーの日本産のレアアースは中国を経由しなくても生産できる利点もあります。来年にも6000m下の採泥実証試験を行う予定です。

3-2.CCS(Carbon dioxide Capture and Storage)
CCSとは火力発電所などの大規模な発生源から二酸化炭素を回収し、パイプラインや船などで輸送し、地中や海洋に貯留(隔離)する技術のことです。日本では貯留適地の確保が課題となっています。この課題を解消するために、深海に気体または液体のかたちで二酸化炭素を希釈・溶解する方法(溶解希釈型隔離法)を我が国では追求するべきだと私は考えています。この方法は科学的かつエネルギー効率的には妥当な考え方ですが、海洋投棄を禁止しているロンドン条約や風評被害の問題などの政治的な課題があります。しかし、溶解希釈型隔離法は、これまで弱点と言われていた日本の深い海を、強みとして活かすことができる、科学的に妥当な方法です。よって国際的・国内的な理解を得るために、科学を良く知る政治家が議論をリードしていくべきと考えています。

4.理科大生の皆さまへ
東京理科大学で「海」と出会ってから、工学から政治へと職場は変わりましたが、「海の価値を上げる」ということを一貫して考え行動してきました。「海洋」と「工学」という政策テーマは、他の国会議員にはない私の強みになっています。理科大生の皆さまも、目の前にある課題に真摯に向き合うことをお勧めします。真理を探究し、常識を疑い、自分を信じて、頑張って下さい。山の頂は一つでも、たどり着く道は無限にあります。

 

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