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東京理科大学×SDGs
- 2021/9/3
- 大学, 理窓 2021年9月号
持続可能な開発目標(SDGs)
2015年9月の国連サミットで採択された持続可能な開発目標(SDGs)は、2030年までに、貧困に終止符を打ち、地球環境を保護し、すべての人が平和と豊かさを享受できる世界を実現することを目指す国際目標です。17のゴールと169のターゲットから構成され、地球上の誰一人として取り残さないことを誓っています。これらは相互に関係しており、その解決には多様な人々が分野の壁を乗り越えて協働する学際的な取り組みが必要です。
東京理科大学は、明治14(1881)年に「東京物理学講習所」として創立され、140年の歴史を経て、4キャンパス7学部32学科、7研究科30専攻を擁する、私学随一の理工系総合大学に発展しました。「理学の普及を以て国運発展の基礎とする-Building a Better Future with Science-」という建学の精神と、真に実力を身につけた学生だけを卒業させるという「実力主義」の伝統を今日まで引き継ぎ、「自然・人間・社会とこれらの調和的発展のための科学技術の創造」を教育研究の理念として掲げています。この東京理科大学の理念は、持続可能な世界の実現を目指すSDGsの精神と完全に一致しています。
東京理科大学の学問分野は、理学・工学・薬学・生命医科学・経営学に亘っています。
学部・研究科がそれぞれ世界レベルの独創的な研究を展開するとともに、総合研究院では学問分野の壁を取り除いた「理科大ならではの融合的連携研究」を推進し、SDGsが示す地球規模の課題の解決に協働して取り組んでいます。さらに東京理科大学では、データサイエンスがSDGsのみならずあらゆる課題に新たなイノベーションをもたらすと考え、すべての学部・研究科がデータサイエンス関連研究を展開するとともに、データサイエンスセンターがその研究成果の社会実装とデータサイエンス人材の育成に取り組んでいます。また全ての学生を対象とした学部横断型の「データサイエンス教育プログラム」を実施しています。
東京理科大学は創立150周年を迎える2031年における本学のあるべき姿を描く長期ビジョン「TUS VISION 150」をさだめ、さらにこのビジョンの実現に向けた「中期計画」を策定しました。東京理科大学はこれからも科学技術の創造による持続可能な世界の実現を目指して、人材の育成、理科大ならではの研究の推進、研究成果の社会への還元などに取り組んで行きます。
東京理科大学副学長 研究推進機構長
藤代 博記
東京理科大学のSDGs取り組み
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例1. 大気からCO₂を回収する革新的技術を開発
工学部 工業化学科 今堀龍志准教授
地球温暖化が深刻化し、気候変動が問題視されている今。早急に対策を講じなければ、地球温暖化によって取り返しが付かない結果になることが予測されています。気温の上昇を抑えるには、主要な温室効果ガスであるCO₂を大気中から削減する技術が必要です。
そこで開発されたのが、大気からCO₂を回収する技術「DAC(Direct Air Capture)」です。大気中のCO₂を吸収し、地球温暖化問題を解決できる技術として注目を集めています。しかし、まだ実用化に至る段階ではなく、革新的な技術開発が求められています。工学部工業化学科の今堀研究室では、CO₂のDACを実用化するために、研究を進めています。
今堀研究室では、持続可能エネルギーである光を使って、CO₂の吸収と放出を行うことができる分子材料を開発しました。これによって、原理的に持続可能エネルギーのみを用いたCO₂のDACが世界で初めて実証されました。
例2. 植物の生き方を理解し、食料・環境・エネルギーの危機に植物を活用する
理工学部 応用生物科学科 朽津和幸教授
(理工学研究科 農理工学際連携コース長併任)
食料・環境・エネルギー問題解決のヒントは、植物の生存システムに隠されている。
地球全体の人口は激増を続けており、飢餓と栄養不良や農産物価格の上昇は、気候変動に象徴される環境問題と共に、世界が抱える重大な問題となっており、安全で安定した食料生産システムの確立が求められています。食料・環境・エネルギー問題の解決のために欠かせないポイントは、太陽エネルギーを活用できる「植物の生き方を知ること」だと、理工学部 応用生物科学科の朽津研究室では考えます。未解明の部分が多い、植物の生きる仕組みを解明し、「食」や「農」に応用していくことが朽津研究室のテーマです。
たとえば近年では、米の品質・収穫量の向上にかかわる「オートファジー」という細胞の働きの解明に取り組んでいます。現在、地球温暖化などの環境ストレスの影響で、米の品質が低下し、収穫量が減っていることは大きな社会問題です。朽津研究室では、オートファジーの能力が欠けると稲は花粉をうまく作れず、米が実らなくなること、つまり稲の花粉や種子の形成にオートファジーが重要であることを発見しました。
この過程を人為的にコントロールできるようになれば、米の品質・収穫量の低下に、ブレーキをかけられるかもしれないということが分かったのです。
例3. 次世代の高効率・低コスト薄膜太陽電池で広がる新しい可能性
理工学部 電気電子情報工学科 杉山睦教授
日本のエネルギー供給は、石油、液化天然ガスと石炭の割合が多く、近年になってから再生可能エネルギー、新エネルギーの割合が少しずつ増えています。
これまでも有限な資源に頼るのではなく、持続可能な「再生可能エネルギー」の開発が必要性なことがいわれてきました。そこへ2011年の東日本大震災が起こり原子力のリスクが露わになったことで、再生可能エネルギーがより注目されるようになったのです。特に太陽光発電は、風力発電や地熱発電と比較して普及率が上がっています。太陽光発電が普及した理由の1つは、国際的な企業競争によってコストが下がったこと。しかし世界的に見ると、日本の再生可能エネルギーの割合はまだまだ低いのが現状です。理工学部 電気電子情報工学科の杉山研究室は、太陽光発電はもっとコストを抑えられると考えています。そこで注目したのが、酸化ニッケル系太陽電池と硫化スズ系太陽電池の開発でした。酸化ニッケル系太陽電池の特徴は透明であることです。光を全て吸収するのではなく、紫外線だけを吸収して発電する。この透明さを活かせば、車の窓ガラスやビニールハウス、眼鏡のレンズなどを太陽光パネルにすることが可能になるというのです。身近な場所で発電ができると、それらを応用したシステムやスマートウォッチのようなウェアラブル端末などの製品がいろいろと考えられていくでしょう。