先端創薬科学を担う研究者・技術者の育成

研究室紹介

近い将来、医療は平均化した治療法を患者に提供する従来型医療から、患者のゲノム情報や生活習慣など様々な情報(ビッグデータ)をAIなどで分析し、患者を特定の集団に分類(層別化)した上で、その患者集団毎に適した治療を選択して進める「精密医療」の時代に突入するといわれています。
がん治療の場合、従来の乳がん、胃がん、膵臓がんなどのがん種別の分類とは別に、がん種は別でも共通した遺伝子に変異や変化がある患者集団に分けて、その集団毎に適した治療を進めることになるともいわれています。その先駆けとして本邦でも「がんゲノム医療」が開始しました。このような時代背景もあり、将来の「精密医療」を見据え、それに対応できる人材の育成を目的にデータサイエンスと実験を融合したスタイルでがん研究を進めています(図1)。特に、本学はデータサイエンスの専門家が多く、ガチガチの実験屋である私はその恩恵を特に実感しています。
近年、がんの種(たね)であるがん幹細胞がさまざまながんで同定されてきました。がん幹細胞は自己複製能、分化能および腫瘍形成能を併せ持ち、まさにがんの種として働きます。このがん幹細胞は、抗がん剤や放射線治療に対して耐性を示し、治療後の再発の原因と考えられています。このがん幹細胞の性質を明らかとすることができれば、がん幹細胞を標的とした新しい抗がん剤などが開発できます。そうすれば、がんは再発せずに治癒すると期待されます(図2)。
当研究室では、先に述べたデータサイエンス手法を切り口に、このがん幹細胞の性質を明らかにする研究を進めています。特に、がんの多様性を生み出す機構であるがん幹細胞の非対称分裂の機構、がん幹細胞の代謝機構、がん細胞転移機構に集中的に取り組んでいます。このような研究の成果を通して、より有効ながんの層別化、診断マーカーや抗がん剤の分子標的の同定を進めていきたいと考えています。

卒業生の広い活躍分野

2012年研究室発足から、8年が過ぎ多くの卒業生が研究室から巣立ち、大学病院、薬局、国家公務員、独立行政法人、企業(営業職、開発職、研究職、その他)や公的研究所等の様々な職場で頑張っております。

2020年度 研究室メンバー

[卒業生コメント]
 多森 翔馬  日本学術振興会特別研究員DC2
(薬・薬2017)

研究室ではがん治療の大きな障壁であるがん細胞の多様性ががん幹細胞からどのように生まれるかを調べています。生物学だけでなく情報学を駆使して将来の精密医療への寄与を目指しています。自主性が尊重される環境なので卒業生の職業には多様性が生まれており、様々な分野で活躍しています。

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