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「世界の理科大」実現に向けて-理窓会代議員総会 東京理科大学理事長挨拶
- 2018/8/31
- 大学, 理窓 2018年9月号
学校法人東京理科大学理事長の本山でございます。本日は、理窓会代議員総会にお招きいただき、ありがとうございます。代議員総会の中で、大学の現状についてお話しさせていただく機会をいただき、大変ありがたく思います。
また理窓会の皆様におかれては、日頃から母校東京理科大学に対し、多大なご支援をいただき、誠にありがとうございます。高い席で恐縮ですが、重ねて御礼申しあげます。
本日は、本学の現状と題し、大学の近況と課題、また「世界の理科大」実現に向けた施策の概要についてご紹介いたします。
1.はじめに
日本における大学を取巻く課題につきましては、本年の新年茶話会にてお話ししました。本年は、2018年問題といわれ、ここ数年は120万人で推移していた18歳人口が、本年から再び減少し2030年には100万人を切るといった状況が取り上げられています。既に私学は4割が定員割れし、私学経営そのものを見直さなければならない状況が想起されるようになりました。
そういった中、本学の一般入試の志願者総数は56,566人と、昨年度よりも3,000人以上増加しております。これは、東京理科大学史上、最多となる水準となりました。また、最近、志願者数の水増しから実志願者をクローズアップして見る傾向にあります。本年の実志願者は29,189名と前年より1,000名以上増加しております。実志願者数ベースでは、志願者総数15万人で全私学中トップの近畿大学とほぼ同数の方に受験いただいている状況です。
入試改革に加え、かねてより取り組んでまいりました、本学のブランド価値向上のための一連の施策と、教職員の教育力、研究力向上のための日常の努力、後ほどご紹介します学生諸君の日頃の勉学の成果が就職力にも表れ、それが結果として受験者増につながっているものと思われます。
本年、学部を卒業した学生では、約97%という高い進路決定率を誇っております。本学は大学院進学率が非常に高く、例年約半数が大学院に進学しております。また、特長として、公務員と教員への就職が大変多くなっております。公務員は84人で、国家公務員採用総合職試験合格者は私立大学で4位の実績です。また、教員就職者は96人。こちらは高校教員採用者としては8位となっております。就職先としても、著名な優良企業に就職しております。
2.「TUS Vision150」について…世界の理科大に向けた取り組み
このように、本学は社会から高い評価をいただいておりますが、18歳人口の減少を始めとする本学を取り巻く課題に対応し、さらに“世界の理科大”を実現すべく、昨年“TUSVision 150”を策定いたしました。本Visionでは、創立150周年を迎える2031年を見据えつつ、今後10年余りの方向性を示すとともに、取り組むべき課題を明確化しています。本日は、このVisionで掲げた課題のうち、“世界の理科大”を、ただのスローガンで終わるのでなく実際的な施策として、“国際競争力強化に向けた体制整備”とそれに伴うさらなる研究力の強化、学部再編、キャンパス整備などの進捗についても、お話しさせていただきます。
*国際競争力強化に向けた体制整備
“世界の理科大”実現の重点課題である国際競争力強化については、3年後の2021年度に向けた目標値を設定し、その実現に向けた広報活動の強化、国際学生寮の設置等の施策を実行してまいります。これらの施策により、2021年には、学部入学生の5%となる200名を留学生とすることを目指します。更に、修士・博士課程の学生の国際学会における発表支援を増加させるなどの取り組みを行い、2021年には、現状の1.6倍増となる700件/年の発表を目指します。さらに、若手教員の国際学会派遣支援も、60件を目指します。
さらに本学から海外に送り出す学生数については、現状の2倍以上の人数を送り出すことを目標としています。教員の海外派遣の推進、外国人教員の比率向上についても、目標に向かって学長室と取り組みたいと考えます。
*研究力強化の取り組み
前述の国際競争力強化に向けた取り組みは、“世界の理科大”実現のための必要条件です。やはりTHE(注1)の世界大学ランキングで、少なくとも日本で10位程度でなければ世界で認知されません。世界で認知されてこそ世界の理科大にいたります。
次は、先日の日経新聞で報道された“論文の生産性”に関するランキングです。本学の強みである研究でも世界の150位といったレベルです。研究の理科大といえるレベルにするためには、国内外問わず、優秀な研究者の招聘、戦略分野の絞り込み等の施策が必要であり、学長とともに取り組みたいと考えています。国際共著論文数の増加も必要ですし、優れた研究成果をハイレベルの学術雑誌に掲載し、論文のサイテーション向上を図っていくことも必要です。このような施策一つ一つを実現していくことによって、本学の研究力のさらなる向上が可能となります。
本日、紹介しました国際協力強化への各種の取り組み、さらにその実現に向けた学部再編計画等を着実に実行し、3年後の2021年までに“世界の理科大”を現実的な目標として語れるレベルまで引き上げたいと思います。
(注1)THE WORLD UNIVERSITY RANKINGS 2017-18) こちらは、昨年、発表された世界大学ランキ ングTHE(Times Higher Education)評価の内訳です。 当然、大学の活動は、ランキングの向上を目的とするものではありません。あくまで、評価指標として考えています。
お伝えしたいのは、世界の理科大をうたうためには、“国際”の部分の増強だけでは達成できないと いうことです。論文の被引用数、留学生数、外国人教員数等は、いずれも“世界の理科大”実現に際し必要な指標です。