グローバル化を推し進める東京理科大学の優れた研究所を訪ねて(第5回)スペースシステム創造研究センター・スペースコロニーユニット

東京理科大学には、国際的に高い評価を受けている研究機関が数多くある。大学の誇る研究所をシリーズで紹介している。第5回目はスペースコロニー研究センター(取材時はこの名称)を訪問し木村真一副センター長(右の写真)にお話を伺った。

宇宙開発の新展開
近年、人類の宇宙進出は範囲・規模ともに急速に広がりつつある。宇宙旅行はビジネスとしてサービスを実現しつつあり、宇宙飛行士だけでなく多くの人が宇宙に行く時代を迎えつつある。アメリカは2024年には男女の宇宙飛行士を月に送ると明言し、欧州や中国など様々な機関が、月面や月近傍、火星などのミッションを提案し、これまでのスペースシャトルや国際宇宙ステーションといった低周回軌道の世界を越えて、大きく宇宙に踏み出そうとしている。さらに特筆すべきは、ブルーオリジンやスペースXに代表される、民間の宇宙開発の台頭である。宇宙開発はこれまでの国家機関など限られていたが、様々な民間ビジネスが大きな役割を果たす時代に突入しつつある。人類の宇宙活動は、個々の点としての宇宙開発から、活動範囲まで広がった面としての宇宙開拓の時代に入りつつある。

図1:宇宙利用・活動領域のロードマップ

宇宙居住関連技術と地上-宇宙Dual開発
人類が宇宙に進出していくためには、ロケットや宇宙船と言った輸送技術はもちろん重要であるが、それだけでは十分ではない。宇宙空間で長期にわたって生命を維持し、人類の活動の拠点となるインフラを構築・維持していく必要がある。このような人類の宇宙居住に関する技術は非常に広範囲に及びその全てを宇宙専用に開発することを考えると非常に大きなコスト負担が問題となる。一方、空気や水などの環境維持、限られたリソースの中での食物生産、インフラの自動構築等は地上においても非常に重要な技術であり、大きなアプリケーションが期待される。

図2:スペースコロニー研究センターイメージ

そこで近年、地上技術中で宇宙開発においても重要となる技術を、地上アプリケーションに加えて宇宙利用を並行して開発進める「地上-宇宙Dual開発」という考え方が、広がりつつある。このようなアプローチをとることで、衣食住に関連する様々な企業や研究者の宇宙開発への参入を可能にする効果も期待でき、宇宙開発のプレーヤーをさらに広げる効果も期待できる。東京理科大学では、こうした考え方から、「スペースコロニー研究センター」(図2)を発足させ内外の宇宙開発機関や宇宙開発関連企業・スペースベンチャー・研究機関などの協力を得つつ、特に宇宙居住に必要となる技術の地上-宇宙Dual開発の実現を目指している。「スペースコロニー研究センター」で地上-宇宙Dual開発の枠組みを、学内の要素技術に限らず、大学や企業の参加を促す仕組みとして「スペースコロニーコンソーシアム」をスタートさせている。

図3:地上-宇宙Dual開発の実現

取材記 :
宇宙開発としてのスペースコロニー研究が、外部の研究機関と連携を図りながら、東京理科大学ならではの横断的に進められていると認識し、研究所を後にした。

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