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- 江戸の和算に魅せられて 数学教育45年
江戸の和算に魅せられて 数学教育45年
- 2021/1/1
- 卒業生, 理窓 2021年1月号
昭和44年(1969年)理科大理学部数学科に入学しました。入学と同時に、英語研究部(ESS)に入会しましたが、後に、数学教育の国際会議に参加、海外の数学教育の視察の時には、英語の勉強が役に立った事は言うまでもありません。
大学を卒業した年に、都内の高等学校に非常勤講師として勤めましたが、2年後に専任になりました。
また、東京理科大学数学教育研究会(理数研)がある事を知り、すぐに入会しました。
諸先輩がたの、研究発表を毎回聞いていましたが、平成2年1月の月例会で、初めて研究発表しました。数学史を日頃から教えたいと思っていたので、テーマは『数学史を指導して』でした。
その後、日本数学史学会に入会し、和算の勉強を他の若い研究者と共にさせて頂く機会に恵まれました。
海外数学教育を調査する
2009年12月30日から2010年1月6日まで、当時の理数研の会長、前会長、役員を中心に約16名で、インドの数学教育の視察に行きました。インドでは大変素晴らしい数学教育が行われているという事で、アミティ インターナショナルスクール(小学校から大学まで)を視察しました。
その後毎年、ベトナム、タイ、台湾、チェコ、ラオス、インドネシア、ポーランド、マレーシア、スリランカ等に、教育視察に出かけ、多くの事を学ぶ事ができました。
数学史教育研究会の活動
数学教師になって以来、私は、長期休暇(夏休み、冬休み)に、数学史に関する本を生徒たちに読ませ、休暇明けに、読んだ本の簡単なあらすじと感想を出させました。生徒たちは、数学史関係の読書をとても喜びました。この事を是非紹介したいと思って、理数研で研究発表したのでした。
数学の授業で、数学史、和算を、取り入れたいと考え和算の権威である佐藤健一先生を中心に数学史教育研究会を立ち上げ、最初の7年間は、私の勤務校を会場にして、研究を続けました。文部省(当時)の方も研究会に見えて、その後、「高校数学に数学史導入」という記事が新聞に掲載され、数学史、和算に関する内容が、教科書で紹介されるようになりました。
江戸の和算の状況
『塵劫記』という数学の本が、寛永4年(1627年)に出版されました。著者は、吉田光由という京都に住む角倉一族の人でした。『塵劫記』は、超ベストセラーとして、江戸時代に日本中の人々に読まれました。掛け算の九九、割り算の九九、利息の計算、測量、開平法、など、生活に必要な数学が載っています。2万件はあったという寺子屋でもそろばんを使って学ばれていました。庶民の数学の知識は、世界でトップレベルであったと考えられます。その後、関孝和、弟子の建部賢弘など多くの数学者により高等数学も打ち立てられました。江戸時代の和算という素晴らしい文化を、中学、高校で是非教えたいと考えたのですが、多くの方々の努力によって、少しずつ実現していることは、大きな喜びです。
現役の学生の皆様へ
江戸時代の和算の発展を考えると、日本人は如何に数学が好きで、また勉強が好きな国民性であることが分かります。学生の皆様もしっかり勉強に励んで欲しいと心から願っています。