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- 理窓 2019年9月号, 関連団体・諸会
- 創立70年を迎える天文研究部と新生同窓会
創立70年を迎える天文研究部と新生同窓会
- 2019/9/6
- 理窓 2019年9月号, 関連団体・諸会
天文研究部(天文研)は、学制改革により東京理科大学が誕生した1949年に創立され、本年で70周年を迎える。東京物理学校時代にも前身である天文部が、坂部三次郎元理事長などの先輩諸氏によって活動していたといわれている。天文・宇宙分野における学生研究団体として創設以降、天体観測及び研究に多くの実績を残し、アマチュアとしてわが国の天文分野の発展に寄与してきた。同窓生は1,000名近くに及び、天文台、JAXA、科学館、プラネタリウム、学校、企業などの研究者、教育者、技術者として第一線で活躍する人も多い。
OB会は、北海道皆既日食観測で大成功を収めた1963年に発足している。活動が発足以降に低迷期を迎えたこともあったが、当時30歳前後になったOBらが1980年に再建を図り、会報『天窓』発行、会費制導入、総会・幹事会を中心になってハレー彗星観測会などの各種イベントを積極的に行ってきた。北海道皆既日食10周年を迎えた1973年のケニア皆既日食観測隊を皮切りに、これまで多くの海外遠征を中心に現在も活発な活動を継続している。1980年にはケニアとインドでのコロナの二点観測により、世界で初めて短時間でのコロナの変化の撮影に成功し学会で報告した。
やがて若手OBも中年になると幹部も家庭や企業などに生活時間がシフトし、また個人情報保護法の影響による住所録廃止に至り、若手OBとのつながりも疎遠になっていった。ネット配信時代の到来により、2002年には活動の場をホームページに移行し、OB会組織は事実上の休眠に入った。この時期以降、有志が長野県に観測拠点を持つなど、同窓としての活動は今でも継続している。国内外の日食観測隊に幾度か現役・OB混成チームを編成していたが、現役とOBの世代格差が広がったこともあって、1991年のハワイ・メキシコ皆既日食を最後に、観測隊を組むことはなかった。
2009年には日本の南西諸島で皆既日食が見られ日本中が大騒ぎしたが、この日食に参加した一部現役とOBが、悪天候に見舞われ消化不良のまま終わったことへのリベンジとして、2012年のオーストラリア皆既日食に向けた観測隊の活動を始めた。現役、OB、家族・知人の合計54名による21年ぶりの観測隊を送り、コロナ観測などを行い無事帰国した。
同年5月21日には本州では実に129年前の明治時代以来の金環日食が見られた。金環帯が首都圏を通過するとあって、一大天文ショーとして日食グラスを手にリング状の太陽に感激した国民も多かった。このとき近代科学資料館とタイアップして各キャンパスからネット中継を実施し、また日食展や一般講演会などを開催した。日食当日には1号館屋上からニッポン放送生中継が、また日本テレビでも準備風景が紹介されるなど、多くのマスコミに取り上げられた。
2017年の北米皆既日食には、3地点54名のOB、現役、家族らが参加し晴天に恵まれた。現役の参加も少なく学術的な観測が影を潜めているのも事実だが、一緒に活動するに際して親子以上の年齢差を、先輩・後輩といった感覚で受けてくれている現役には多くのOBが感謝しているはずだ。
一方、ホームカミングデーには、以前より移動プラネタリウム、写真展示、ミニ講演会などに参画していたが、OB会が組織として休眠状態でもあるため関連団体への登録には消極的だった。OGも活躍している天文研ではOB会という名称ではなく、新たに「同窓会」として理窓会関連団体に登録して活動を再出発したいと考えた。かつてのOB会メンバーも加えた事務局体制と運営などを決めた会則の作成、幹部選出の検討を行い、一昨年に加入して理窓会から承認を得た。同窓活動は世代ごとの小集団で行っていて、その様子が同窓会専用のfacebookに載せられ、現在約100名が情報交換している。若手卒業生を幹部層にシフトさせることが課題になっている昨今、本年の10月に予定している「天文研70周年記念式典」は現在、現役と若手同窓生が中心になって活動しており、今後の活動に期待している。
(会長 山本威一郎)
天文研70周年記念式典 開催日:2019年10月13日(日) |