統計科学(数理データサイエンス)で未来を変える

研究内容と統計科学

統計科学(Statistical Science)は、自然科学や社会科学を問わず多くの分野で用いられるデータ解析の手法を開発する研究分野です。その中で、「瀬尾研究室」では、多次元データを取り扱う統計解析である多変量解析(判別分析、主成分分析、相関分析、多変量多重比較・・・)の理論や手法に関する研究を行っています。特に、最近は、データに欠損が生じた場合の統計解析法の開発や経時データ(繰り返し測定データ)である成長曲線モデルに関する統計解析、多次元データにおける多変量正規性の検定問題の研究を行っています。

図.1

右図.1はデータが単調型に欠測しているデータをモデル化したもので(例えば、n1=10でp=5ならば、5つの項目(変数)に10人分のデータがあるという意味になります)、k-step単調欠測データと呼ばれ、このデータセットのもとで、データ解析するための統計的手法の開発を行っています。ここで、この「統計科学」がデータサイエンスの数学的な理論(数理データサイエンス)の核として重要な役割を果たしています。

超スマート社会と数理統計学

図.2「Society 5.0」出典:内閣府ホームページ (https://www8.cao.go.jp/cstp/society5_0/index.html)

近年、人工知能(AI)、ビッグデータ、Internet of Things(IoT)などによる高度な先端技術があらゆる分野に取り入れられ、我々の生活や社会にも変化がおきつつあります。そのような背景のもと、「超スマート社会」とか「Society 5.0」という言葉が国によって提唱され、その実現に向けて多くの事業が始まっています。「Society 5.0」とは、狩猟社会、農耕社会、工業社会、情報社会に続く、以下のような新たな経済社会のことです(図.2参照)。このような時代の中、今まさに「データサイエンス」というものが注目を浴びていますが、「データサイエンス」がさらに発展していくためには特に「数理統計学」とよばれる統計的推測の論理を数学的に整理したものの理解と発展が重要となっています。

「データサイエンスセンター」と「統計科学研究部門」

東京理科大学では、このような時代の要請を受け、データサイエンス分野の教育研究の向上及び社会貢献の促進を図る目的で、2019年4月に「東京理科大学データサイエンスセンター」が設置されています。私は副センター長として社会人教育担当を務めています。
また本学では、独自のデータサイエンス教育プログラムを作成し、理科大生ならだれでも、単位を取得し条件を満たせば、データサイエンス認証書[基礎]と[発展]を取得できるプログラムも動いています。研究面では、「データサイエンス」の関連分野(特に、数理統計学)を専門とする教員が他大学には類を見ないほど本学には在籍しており、東京理科大学の総合研究院の中に「統計科学研究部門(部門長:瀬尾隆)」を2020年4月に立ち上げました。構成員は本学の教員で20名ほどの組織です。

2019年度研究室メンバー

[卒業生コメント]
 細谷 美貴  株式会社 電通国際情報サービス
(理・応数2014/修2016)

研究室では欠測値データの最適な補完方法についての研究を行いました。論理的に仮説を立て、定量的に検証することの重要性を学び、物事を多面的に捉える力を培いました。研究を通して得た学びは、現在のシステム開発業務において、システム仕様の検討や動作検証に生かされています。

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