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- 卒業生, 理窓 2018年5月号
- 第20回 坊っちゃん賞受賞「建築は地球の一部」
第20回 坊っちゃん賞受賞「建築は地球の一部」
- 2018/5/19
- 卒業生, 理窓 2018年5月号
第20回坊っちゃん賞受賞
三分一博志氏は第20回坊っちゃん賞(平成30年)を受賞されました。三分一氏は1992年理工学部建築学科を卒業され、小川晋一アトリエを経て、三分一博志設計事務所を設立されています。
「犬島精錬所美術館」と「直島ホール」
数々の作品を発表されていますが、なかでも「犬島精錬所美術館」は日本建築大賞と日本建築学会賞作品賞をダブル受賞、又、「直島ホール」は2017年に2度目の日本建築学会賞作品賞を受賞されました。
三分一氏は瀬戸内海周辺で多くの作品を手がけ、そこでは“動く素材”<風・水・太陽など>と地形との関係を読み解き、リサーチを重ね作品を仕上げていく。「犬島精錬所美術館」では犬島の自然エネルギーとして、太陽を空気を動かす動力として利用しています。又、「直島ホール」では2年半もの徹底したリサーチによって、集落では南北に風の流れがあることを知り、入母屋屋根に南北に抜ける風穴を設けることによって、そこを風が抜けるときの圧力差を利用して自然換気を行っています。
-Interview-
“建築は未来への手紙 三分一 博志”
「野田建築50周年記念誌」(2017年10月発刊)より
有岡:以前から、「地球のディテール」という発言をされています。いわゆる建築のディテールよりも、大きなスケールで建築を考えているということでしょうか。
三分一:素材から建築のディテールまで丁寧に、かつこだわっていると自分では思っています(笑)。ただ、最終的なこだわりは、建築が地球の一部になるということ。
地球上のあらゆる素材を、他の生命体と一緒に考えながら、建築のあり方を考えている。それが「地球のディテール」という意味です。
「直島ホール」の場合は、リサーチをしていく中で、400年前から人々の知恵でつくられてきた集落のかたちが、手紙のように読み取れました。先人たちから受け渡されたものを、今度は400年後の人に、建築で記しておこうと思いました。
垣野:「未来への手紙」とは、いい言葉ですね。
三分一:長く大事にしてもらえる建築は何かと考えたとき、まずは地球のディテールになっていること。それから、この建築はこの場所のためにつくったものだと利用する人に思ってもらえること、それは大事にしています。
手紙を記したとしたとしても、それが人の目に触れて、残っていかないと意味がないと思いますからね。100年、200年、400年と、次の世代の人がこれを見てどう感じるか。そこまで伝えていくためには残っていないといけません。それには、ちゃんとしたメッセージが込められていないといけない。その場所を個人的な趣味のものとしてとらえていたら、後世に残してもらえないと思いますから。すなわちこの手紙(建築)には私のメッセージが刻まれているのではなく、過去からの先人の営みと地形と自然との関係がこの建築を通じて読み取れるようになっている事が大切だと思っています。
聞き手:有岡三恵(理工・建1990)、垣野義典(理工・建1999、理工学部建築学科准教授)
森美術館での建築展(4/25~9/17)に出展『 建築の日本展 :その遺伝子のもたらすもの 』 東京・森美術館( 六本木ヒルズ森タワー53階) |