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- 工学部は、「無ければ造ろう」"創像"とモノづくりの世界 マッスルスーツで「生きている限り自立した生活を実現する」
工学部は、「無ければ造ろう」"創像"とモノづくりの世界 マッスルスーツで「生きている限り自立した生活を実現する」
- 2019/5/15
- 大学, 理窓 2019年5月号
【受賞歴】
2018年11月14日 世界発信コンペティション
東京都ベンチャー技術奨励賞(東京都)
「腰補助マッスルスーツ スタンドアローン」
2018年10月24日世界で最も革新的なベンチャー企業100社(米国Red Herring社)「Global Winner」
【研究室紹介】
本研究室では、実際に役に立つロボット技術を追究しており、「生きている限り自立した生活を実現する」機器の開発を目的に、「マッスルスーツ®」をはじめとする着用型筋力補助装置の開発、新しいコミュニケーションメディアとして顔ロボットの開発、実用的な画像処理技術の追究など、他研究機関では行われていないユニークな研究を独自に進め、企業に負けないコンセプトや技術力を保有し、複数の企業と実用化のための共同研究開発を推進しています。2013年にはベンチャー企業「株式会社イノフィス」を立ち上げ、積極的に製品化を進めています。
1.夢のようなロボットではなく、人のためのロボットに
本当に役に立つことは何かと考えた時、人間として一番嫌なこと、精神的に最も負担となることは、自分の力で動けず、人の世話になることではないかと思い、それを解決する装置を作れば、世の中の役に立てると考え、まず、「動けない人を動けるようにする」ための装置の開発を2001年から始めました。通常の機械類と異なり、人間が装着して使うロボットは、仕様書通り作ることが完成ではありません。マッスルスーツは、現場の意見を取り入れて柔軟にトライ&エラーを繰り返し続けてきた結果であり、仕組みも形状もすべてがノウハウの賜物。真似できない技術が詰まった製品です。現在までに製品化したものは「腰補助」に特化したものですが、その他の体の動きを補助する装置も、順次、スピーディーに製品化していきます。
2.マッスルスーツの仕組み
マッスルスーツはモータではなく、非常に強い力で収縮する、空気圧式の人工筋肉を使用しています。これが身体を動かす原動力となり、人や物を持ち上げる際の体の負担を大幅に軽減します。
・McKibben型人工筋肉
ゴムチューブを筒状のナイロンメッシュで包んで両端をかしめた構造で、ゴムチューブへの圧縮空気注入に伴うゴムチューブ膨張が、ナイロンメッシュにより長さ方向の収縮を伴う強い引っ張り力に変換されます。軽量かつ簡易な構造で柔らかく、水中でも動作し、収縮する(最大でも全長の30%程度)だけなので安全に使えます。マッスルスーツで使用している人工筋肉は、通常時直径1.5インチ130g、5気圧で最大200kgfの引張力を発生します。
・腰補助動作原理
背中フレームは、腿フレーム上部の「回転軸」周りに回転できる構造です。人工筋肉の一端は背中フレーム上部に固定され、他端にはワイヤが取り付けられています。ワイヤの他端は腿フレームの回転軸周りに設置されたプーリーに固定されています。動作原理は次の通りです。人工筋肉収縮により腿フレームに固定されたワイヤが引っ張られ、①のように背中フレームが「回転軸」周りに回転し、上半身を起こします。その反力は、腿フレームを②のように回転させるので、腿パッドによりその回転を抑えます。どのような姿勢、脚角度でもご利用いただけます。
3.活用されている現状
現在のマッスルスーツは、3種類のタイプが用意されている。販売台数は累計で3800台、約5割が介護施設での利用で、その他は畑作業、自動車部品材料移管作業、建設現場等重量物取り扱い作業等で利用されています。
[卒業生コメント]
長谷川 翔 株式会社 デンソー(工・機2006/修2008)
小林研究室では主にマッスルスーツの研究に取り組み、図面を描く所から材料の選定、加工、電子回路や制御プログラムの作成と“物を造る”ということの一連の流れを学びました。また、介護施設等での実地試験では自分が携わったロボットを使ってもらうことの怖さと嬉しさの両方を体験しました。これらの経験は、技術者としての“地力”となって今の仕事にも活きていると感じています。