- Home
- 大学, 理窓 2021年9月号
- ナノオーダーの微細加工に取り組む
ナノオーダーの微細加工に取り組む
- 2021/9/3
- 大学, 理窓 2021年9月号
研究室紹介
ナノテクノロジーは今日の高度情報化社会を支える基盤技術です。例えば、コンピュータのメモリやCPUなどは、超微細加工技術によって集積され驚くほどの記憶容量や計算スピードを達成しています。本研究室では、ナノメートルオーダー(10-⁹m)の超微細加工技術の研究を行っており、特に次世代技術として期待されているナノオーダーでの3次元(3D)形状創製技術を重点的に行っています。
研究例1
強度と防汚性を併せ持ったモスアイ構造の形成技術
目的 モスアイ構造※1はナノオーダーの微細構造のため、触ると壊れたり、指紋が付き拭き取れないという問題点がありました。これを解決できれば、モスアイ構造がタッチパネル等へも使用可能になるため、研究を進めてきました。(※1 蛾の目構造)
概要 グラッシーカーボン(GC)基板に酸素イオンビームを照射するだけで、モスアイ構造が形成できます(特許登録)。モスアイ構造はナノオーダーの針状形状を持ち、可視光領域で反射防止効果があります。このナノ構造は、通常触ると壊れる程度の強度です。本技術では、GC上のモスアイ形状を特殊なUV硬化性樹脂に転写することで、触っても壊れない非常に高い強度を得ました。また、光硬化樹脂に防汚成分を含有させ、指紋などのふき取りも可能となりました。転写された樹脂は透明で、モスアイ構造を有するため、反射防止効果に加え、視認性も向上しました。また、マイクロレンズアレイ上にもこのモスアイ構造を形成する技術を開発しました。これによって、反射率0.6%、水の接触角147°のマイクロレンズアレイができました。
研究例2
ナノ構造転写技術による機能性フィルムの創成
目的 ナノ構造を転写する手法としてナノインプリント技術がある。しかし、この手法は、樹脂へのパターン形成技術であり、金属への転写には向かない。一方、近年プリンテッドエレクトロニクスという、プラスチック基板上に金属配線を施し、曲げられる電子デバイスが開発されており、ナノオーダーの金属パターンを金型を用いて転写できる技術が重要となりつつある。本研究は、このような技術ニーズに対してナノインプリント技術を用いて課題解決する事を目的としております。
概要 ナノ構造作製技術として、グラッシーカーボン(GC)に酸素イオンビームを照射し、モスアイ(反射防止)構造を作製する技術及び作製されたモスアイ金型から樹脂と金属にパターンを転写する技術も開発した。樹脂へはナノインプリント技術を用い、金属へは、金属離型層を用いてPET上へパターン形成が可能である。さらに、これらの技術はロールトゥロール法で連続的に転写できるよう開発中である。これによって、樹脂だけでなく金属のナノ構造が印刷のように速く大量に作製できるようになる。
卒業生コメント 内田 朋也 凸版印刷(基礎工・電応2017 修) 谷口研究室ではナノインプリントだけでなく、電子線露光やナノパターン評価技術を始めとした微細加工技術に関するスキル・ノウハウを網羅的に学ぶことができました。私は今、凸版印刷という会社で微細加工技術の要素技術開発を担当しています。谷口研究室で学んだ事全てが私の宝物であり、最大の武器にもなっています。 |