グローバル化を推し進める東京理科大学の優れた研究所を訪ねて(第2回)「ヒト疾患モデル研究センター」

岩倉洋一郎 ヒト疾患モデル研究センター長

東京理科大学には、国際的に高い評価を受けている研究機関が数多くある。大学の誇る研究所をシリーズで紹介している。第2回目はヒト疾患モデル研究センターを訪問して、岩倉洋一郎ヒト疾患モデル研究センター長に話を伺った。

◇センター設立の背景と目的

本研究センターは、生命医科学研究所を中心に薬学部、理工学部、基礎工学部など、理科大が有する生物・生命医科学研究グループが連携し、自己免疫疾患やアレルギー、生活習慣病、がん、神経疾患、老化など社会的に大きな問題となっている疾病について、新たな治療法・治療薬の開発を行うための拠点を形成することを目指している。私立大学戦略的基盤形成支援事業の採択に基づき2013年に活動を開始した。疾患モデル動物はヒト疾患の原因の究明や治療法の開発などのために必要不可欠であり、人類の健康やライフサイエンス研究の進展に大きく貢献してきた。本研究センターでは、マウス疾患モデルを用い、発症過程で重要な役割を果たすと考えられる遺伝子を改変したマウスを作製することにより、これらの遺伝子の疾病における役割を解明し、治療法の開発に繋げる。遺伝子改変マウスは、その作製法を開発した研究者が2007年のノーベル賞を受賞していることからも解る様に、遺伝子機能の解析に極めて有用であり、本研究センターの活動を通して新規の治療薬、治療法が開発されることが期待される。

◇研究体制

センター内に遺伝子改変マウスの作製支援グループを置き、研究促進を計っている。センター内の各研究グループは遺伝子改変マウスや解析手法を共有することにより、分野横断的な共同研究を推進している。

◇研究組織

研究グループは以下の6グループである。

【写真は改変マウスの例 ※】

①免疫疾患研究グループ:サイトカインや自然免疫受容体、シグナル伝達因子などの遺伝子欠損マウスを利用して、自己免疫やアレルギーに対する治療薬や機能性食品の開発を目指す。
②器官発生・再生研究グループ:器官形成と維持、細胞小器官の運動、及びその異常による癌化プロセスに関与する遺伝子の改変マウスを作製することにより、これらの遺伝子の機能解析を行い、治療への応用を目指す。③精神・神経疾患研究グループ:神経回路形成関連遺伝子改変マウス作製による精神・神経疾患発症機構の解析を行い、治療への応用を目指す。④癌研究グループ:癌の発生機序を分子、細胞、個体レベルで解析し、発症に関与する遺伝子改変マウスを作製し、遺伝子機能を解明する事により、治療法の開発を目指す。⑤発生工学グループ:遺伝子改変マウスの作製、胚凍結保存、クリーニング、マウス配布等の研究支援を行う。⑥アドバイザリー委員会:学内外の専門家から、センターの運営や、研究方針、個別の研究内容などについて指導・助言を受ける。

※ 写真は蛍光で追跡可能な遺伝子改変マウス 写真提供:後飯塚僚教授

◇ヒト疾患モデル研究センター実験動物施設

【実験動物施設の内部】

本施設では最先端の動物実験が可能であり、改変マウスを作製するための設備や、無菌動物室、感染実験室、行動解析室などを完備している。また、実験動物の扱い方も検査認定機関から高い評価を受けている。施設は共同研究や共同利用を受け入れており、現在も積極的に他学部や企業と共同研究・共同利用を行っている。

◇研究支援事業

取材記 :ここでの基礎研究は、幅広い生物学、医科学研究の基盤を支えるとともに、応用研究にも直結する大事な研究であると理解し、研究所を後にした。

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